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『Commons(コモンズ)Vol.3』に論文を掲載して頂きました

東京工業大学 修士課程を2023年3月に修了してから早いもので1年が経ちましたが、先日、修士論文の内容をまとめ直した拙稿を「未来の人類研究センター」のオンラインジャーナル『Commons(コモンズ)Vol.3』に掲載して頂きました! 研究に際してご指導・ご協力下さった全ての方にこの場を借りて心から感謝申し上げます。



*東京工業大学「未来の人類研究センター」とは理工系大学の中で生まれる人文社会系の知を探求しリベラルアーツ研究を推進するために2020年に設立された組織.

『コモンズ』は年に1号刊行されています.

タイトルは

「医療」と「嗜好」のあわい—国内における大麻使用の実践の分析  …と、突然の告知で失礼しておりますが、ブログもご無沙汰でインスタなどでもセラピストとしての活動(と猫のこと笑)をちらほら報告させていただくばかりだったので、急に何の話(謎)?という方も多くいらっしゃるのではないかと…

あらためてこの機に自己紹介も兼ねて、そもそもなぜ大学院に?といったことを簡単にご報告させてください。


大学院に入学したのは2019年春。

その頃なんとなく人生の頭打ち感を感じていた時期で…そんなときにたまたま参加した勉強会で頂いたご縁を辿って「大学院で学ぶ」という選択に至りました。


セラピストとしてヘルスケアの仕事に従事していくなかで、そして年齢を重ねて人生がちょっとづつ複雑になってきたところで、「健康」「病」「医療」「身体」といったものをあらためて体系的に学んでみたくなったのが進学を決めた主な理由です(20年以上ぶりの受験…!)。


そして専攻に人類学を選んだのは、「からだ」や「いのち」といったものを対象とする「医療人類学」という分野で行われている研究が関心のど真ん中に飛び込んできたからでした(例えば「癒し」「スピリチュアル」「トラウマ」「更年期」…といった身近な関心事ともリンクするテーマが医療人類学分野で研究されていたりします)。


西洋近代医学ベースの「THE 医療」からこぼれおちた事例を積極的に扱う医療人類学の研究はアロマテラピーや植物療法や気功など「補完代替療法」に分類されるものの恩恵を日々享受している身としては大変わくわくするものでした。


修士課程では研究テーマを自由に設定できたのですが、わたしは「大麻」に関する研究を行いました。


理由は大麻という植物の医療資源としての活用可能性に興味があった(美容業界におけるCBDの流行も記憶に新しいタイミングでした)というのがベースにありつつ、大麻について知れば知るほど「なぜ?」という疑問が広がっていったからでした。


ご存じの通り現在の日本では大麻は「ダメ。ゼッタイ。」といったイメージが浸透していますが、歴史的にみれば何万年も(日本列島域では縄文時代から)衣食住に渡って活用されてきた「植物」であり、漢方として利用されていたことも知られています。


そして近年の国際的な大麻をめぐる動向は大麻成分に関する基礎研究が進んだことで使用に伴うリスクが見直されたり、医療資源としての活用が広がるなど、規制緩和の傾向にあります。

医薬品としてだけでなく、カジュアルでおしゃれな嗜好品・身近なハーブとして大麻が活用されている国や地域の情報も耳にする機会も増えてきました。


グローバル化がこれほど進むなかで、国内外でこんなにも「同じモノ」に対する「認知」や「表象」が違っているのはなぜなのか?「大麻」そのものの危険性(または安全性)だけをみていてもその答えには辿り着けず…


また、日本で暮らしていると大麻使用のリスクについては学校での薬物乱用教育やメディアを通じて知る機会がありますが、ベネフィットについては全くと言っていいほど表立って知らされることがありません。


そこで研究では「大麻を使用している一般の方」約20名にインタビューを実施し、そもそもなぜ大麻を使うのか?(特に日本では取り締まりの対象となるにも関わらず、なぜわざわざ危険を犯してまで?)について調査することからスタートしました。

ちなみに、大麻は「産業用」「医療用」「嗜好用」に分類されることがありますが、今回の研究では大麻成分が有する向精神作用と関わる「医療/嗜好」大麻の使用者(つまり大麻成分を心身に作用させて使用している方)を対象としました。


(簡単に補足しておくと、大麻の主要成分は「THC」「CBD」が知られていますが、精神活性作用…つまり「ハイ」になったりする働きを有するTHCのリスクが問題視される傾向があります。CBDはそのような効果をもたらさない為、現時点でも規制の対象にはなっていません。)



インタビューを通じて分かったことのひとつは、大麻が「生きていくために必要だから使う」ということを選択している人たちが少なからず存在しているということ。


たとえば重度の精神疾患で自死をも考えた経験をされた方からは、壮絶な苦しみのなかで大麻を選択された体験を聞かせて頂きました。病院で処方された薬が全く合わず、希死念慮に悩まされ、打つ手が無くなったときに大麻を使った…使用したら驚くほど元気になって社会復帰出来た…

「死ぬくらいなら法律なんて関係ないと思った」という言葉は、とても重く心に響きました。


他にも痛みの緩和や不眠の解消といった具体的な不調の改善に役立てられたいわゆる「医療」的なケースから、人生が豊かになった、生きづらさが改善されたといったケースまで「QOLの向上」と結びつく体験は数多く聞かれました。


たくさんの「語り」を前に湧きあがった疑問は、大麻を「医療用」「嗜好用」に区分して行政が「管理」することの妥当性とは?ということでした。


ちょうど昨年12月の臨時国会で大麻に関する法律の改正が決定し、今後は簡潔に言えば「(産業と)医療は一部緩和するけど、嗜好はますます厳しく規制する」といった政策の方向性が示されました(ちなみに「医療」として現時点で定義されているのは非常に限定的な内容で、大麻草をハーブや漢方のように使うことは一切想定されていません)。


身近な方からも大麻については「医療用は認められるべき(だけど、嗜好はダメ!)」といった意見を聞かせてもらうことが多々ありますが、実際にインタビューをしてみると、その線引きはとても難しいと感じることばかりでした。


そんな疑問から発展し、最終的には個人の「生」に「社会」はどこまで関与してもいいのか?ということを考察してみました。

社会にはいろんな決まりごとがあり、それによって秩序が保たれ、わたしたちは安心や安全を享受できているわけですが、ときどき「権力」の圧が強すぎやしませんか?ということもあったりします。


人文社会学の分野では「生政治/生権力」といった概念がよく参照されたりしますが、何か社会の空気に違和感を感じたときには「もしかしておかしくない?」と「常識」や認知のフレームを問い直してみたり、今のかたちとは違う社会の在り方を想像してみることはとても大切なこと。

この度の研究では大麻を取り巻く問題を通して、最終的には「社会」のなかで「ひと」がよりよく幸福に「生きる」こととは?というスーパー根元的な問いについて考えてみたつもりです(というか、全ての学問・全ての研究と言われるものは「よりよい世界をどうしたらつくっていけるのか」という出発点から始まっているものですよね…きっと)。


ということで、長く失礼しましたが…

引き続き日常の中でスルーしてしまいそうな疑問や違和感と丁寧に向き合う姿勢を忘れず、ぼちぼちとでも学びを続けていけたらと思っています。


大学院で学んだことをSOMIでの仕事(=生き方)に具体的にどう活かしていくのかは日々模索中ではありますが、これからもいろんな方と一緒に「よりよい世界で、よりよく生きること」を考えたり、話したりしていけたら嬉しいです。


そしてこの論文を大麻規制をめぐる問題はもちろん、様々な社会的な課題を考える何かのきっかけにお役立ていただけたらこの上なく幸せです。

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